ギフチョウ Luehendorfia japonica
♀ 1998.4.25羽化
イエローバンド♀ 2003.4.11羽化
阪神ファンでも虎フェチでもないが黄色と黒のだんだら模様に魅せられる蝶である。黄色と黒のストライプといえばどぎついイメージだが妙に気品があるのは後翅の紅班とブルーとオレンジの斑紋のせいか。ヒメギフチョウにはオレンジの斑紋はない。自宅近辺はちょうどギフチョウの分布の空白域だったので昆虫少年には高嶺の花だった。カタクリに吸密するギフチョウの写真を図鑑で見て庭にカタクリを植えたこともあった。高校時代はセーラー服を着た蝶々を追いかけていたので本物の蝶々採りの暇がなかった。東京暮らしの時、誰が引いたのかLuehendolfia線などというギフチョウとヒメギフチョウの分布境界線が重なる処に行く機会があり、時期遅れの痛んだギフを採集したことがある。採った瞬間はけっこう感動したのだが展翅板から外した時には鱗粉はすっかり落ちてウスバシロチョウのように翅が透けている標本でがっかり。そんな訳で84年に田舎に戻った時、真っ先に採りたいと思ったのがギフとヒメギフだった。翌早春にまず南の黒いギフを狙うことにした。産地は局地的だしアバウトな情報しか持ってなかったから車で1時間半くらいの距離を下見に何度か通った。桜が咲く頃に目星をつけておいた丘陵で新品の1♂をゲット。大感激したのだがその日は結局それだけだった。数日後訪れると影も形もない。近辺を捜索。ひとつ丘を越えた谷間の日溜まりでギフの乱舞を見た。桃源郷かと思った。林の中でヒメカンアオイの群落も見つけたので飼育してみようと決めた。食草のカンアオイは園芸店の山野草コーナーで実物を見たことがあったのですぐに判ったが根に特有の匂いがあるのを初めて知った。ヒメカンアオイを何株かいただいて生かしておいた♀に産卵させようとしたが失敗。数日後産卵せずに死んでしまった。4月末にまた訪れて卵を採集。約70卵。真珠光沢の綺麗な卵で図鑑のとおりに葉裏に10卵近く産みつけられていた。
困ったことがひとつ。それは食草の確保であった。嬉しさのあまり70卵も採ってきてしまった。いただいてきたヒメカンアオイで飼えるとはとうてい思えない。また貰いに行って食草を根こそぎしてくるわけにはいかない。ギフの産地が絶滅してしまう。そこで思いついたのがヒメギフの食草であるウスバサシン。ギフもウスバサイシンを食すそうな。結局採れなかったが中学生の頃ヒメギフを探したことを思い出した。昔ヒメギフの産地が近くにあるという噂があった。既に絶滅したという噂もあった。図鑑によると確かにヒメギフのLuehendolfia線の範囲内である。市の郷土館に昔の標本を見に行ってラベルで採集地名を確認。棲息していたのは事実だった。ヒメギフは棲息してなくてもウスバサイシンはまだ生えているかもしれない。その地名近くを捜索した。実物は見たことがなかったがウスバサイシンらしき植物は見つからなかった。似たような環境を求めて捜索範囲を広げた。隣の谷に移動して上流のカラマツ林を走っている時ハート型の葉が目に止まった。車から降りて確かめると誰がどう見ても図鑑で見たウスバサイシンだった。付近をよく見るとけっこう生えている。ウスバサイシンの根にもカンアオイとは違うが独特の匂いがあった。さらに上流を捜索するとかなりの範囲で群生していた。やり〜。距離的にも車で15分くらい。これで飼えると一安心。教訓:食草を調達できるかどうかの確認が先である。
←黒いギフ
♂ 1986.4.5羽化
この年は他に北の黄色いギフチョウとヒメギフの卵を採集してしまい計250頭近い幼虫を飼うはめに。終齢幼虫になる前にゴミ袋一杯のウスバサイシンを山に採りに行った。終齢幼虫になると毎朝ゴミ袋一杯のウスバサイシンが必要となった。雨が降ろうが葉っぱを採ってこなければならない。ある時など目の前にでっかいカモシカが立っていた。下ばかり見ていたから気がつかなかったのである。両者数秒睨みあったがカモシカが逃げて行ってくれた。熊でなくてよかったぁ。早く蛹になってくれと何度お願いしたことか。ウンチの量も半端でなく毎日のお世話で大変だった。ウンチが何かに使えないものかと思ったりもした。いい薬効成分がありそうなのだがどんなもんだろう。教訓としては飼う頭数はほどほどに。これ以降は20〜25頭くらいにしている。それでも産地別だのヒメギフだのを同時に飼うとなると大変である。
ようやく蛹になってくれた時にはほっとした。さっそく素焼きの植木鉢に7分目ほどの赤玉土を入れ、水苔を敷き、蛹を並べてから水苔の布団をかけてやる。破れパンストで覆いをして、常時日陰になる地面に埋め、翌年の春までじっと待つ。
翌年2月末、植木鉢を掘り出し蛹をタッパーに移して冷蔵庫に。白い黴の生えた蛹や殻だけになってしまった蛹が少々。湿気が多すぎたかも。4月になり冷蔵庫から出す。植木鉢に止まり木用の枯れ枝(割り箸でも可)を立て蛹を並べ羽化を待つ。一週間ほどでほぼ一斉に♂が先に羽化する。羽化期は産地と一致するというが早く冷蔵庫から出せば早く羽化するように思える。羽化した成虫はすぐに枯れ枝に登り始める。同じ枯れ枝に登ってもつれ合って落下するものもいるので何本も立てたほうがよい。翅を伸ばし始めると枯れ木に花が咲いたような風情になる。
最近は埋めた蛹を晩秋に掘り出して冬場は冷蔵庫管理にしている。
羽化
1齢幼虫
2齢幼虫
中齢幼虫
終齢幼虫
前蛹